皮膚科 アレルギー科 小児皮膚科 美容皮膚科
尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)は、傷から皮膚にヒトパピローマウイルスが感染して生じる「ウイルス性いぼ」のことを指します。感染力を有する成熟ウイルスは微小な外傷から侵入して分裂能を有する基底細胞に感染すると考えられています。外観は皮膚から盛り上がったゴツゴツとした病変であり、足の裏や手の指などに多くみられます。他の皮膚に感染が広がる恐れがあるので、治療する必要があります。
治療には、第一に液体窒素を用いた冷凍凝固術が行われます。液体窒素は-196度と非常に冷たい液体で、液体窒素を綿棒に含ませて、ウイルス性いぼに押し当て治療します。ただ、いくら冷やしてもウイルスが死ぬことはありません。
では、どうやって治すかというと、液体窒素にて冷やされた皮膚は、やけどを起こしたように水疱(すいほう)という水ぶくれを生じ、ウイルスが寄生し含まれている角質が皮膚から離れていきます。そして、ピンセットなどを用いて皮膚から離れた角質を取り除くことにより、ウイルスを治療することが出来ます。
水疱は、早ければ約5時間~12時間後には生じます。水疱は時間が経つと、消えてしまうことがあるので、当院では水疱が出来たらすぐに受診もらうようにお願いしています。午前中に液体窒素を行い、午後に再来院して頂き、水疱を除去し、一日で治ってしまう患者様も多くおられます。水疱が出来ないと治療効果が低く、無駄に時間と治療費が浪費されるだけですので、軽く液体窒素を当てるだけの治療はお勧めできません。ですので、当院では液体窒素を行う理由について、紙を用いて明確に説明し、ご同意頂いた上で、水疱が出来るように行っています。ですが、無駄に強く液体窒素を当てて、必要以上に患者様に痛みを与えないように、必要最低限で行っております。そのさじ加減は非常に難しく、いぼの大きさや皮膚の部位によって異なるために、当院では必ず院長が行っております。看護師が行っているクリニックも見受けられますが、看護師ではどうしても軽くなってしまいます。
しかし、液体窒素の治療には刺されるような痛みを伴い、時には大きな水疱が生じ、足の裏だと歩行に支障をきたすことがあるので、患者様の生活スタイルやご年齢を考慮し、患者様とよく相談し液体窒素の強さを決めています。必要であるからといって、やみくもに同意を得ずに、液体窒素を行うことはありませんので、その点はご安心ください。
また、お子さんや、また成人の方でも痛みに敏感な方には、液体窒素以外の痛くない治療(モノクロロ酢酸など)も提案させて頂いています。モノクロロ酢酸は、痛みを感じない治療として、多くの患者様から支持を得ています。痛みが感じないから弱い治療と思われがちですが、全くそのようなことはなく、当院では他の皮膚科で、3~5年間もの間液体窒素を行う治らないいぼも、モノクロロ酢酸で完治しております。患者様自身も治らないものと、あきらめていたので、完治したことに驚かれておりました。モノクロロ酢酸は、酸性の液体で塗布した部位の角質が壊死することで、ウイルスを取り除きます。ですので、いぼの大きさに関係なく治療が出来ます。また、ウイルスが感染していていない部位には、角質が壊死することはほぼないので、多発している部位に広めに塗布しても、問題なく安心して塗布できます。そして壊死した角質を院長がカミソリで削り落し、再度モノクロロ酢酸を塗布するといった工程を繰り返し、いぼを減らしていきます。カミソリで削ぐ作業も壊死した角質と壊死ししていない角質とを見極める必要があり、経験がないと出血を来してしまいます。他の注意点としては、モノクロロ酢酸が、誤って薬液が深部にまで浸透し過ぎてしまうと、激しい痛みを生じます。ですので、薬液を留めておく為に貼る絆創膏を何時間貼って石鹸で洗うべきかを疣贅の大きさや皮膚の部位をから判断し、毎回患者様にお伝えしております。
ウイルスが正常な皮膚に寄生している為、ある程度正常皮膚を含めて除去する必要性を生じます。ですので、尋常性疣贅の治療は、液体窒素やモノクロロ酢酸にせよ、ある程度痛みを伴う治療となってしまうことをご理解ください。それは、どこの病院でも同じことと思います。
当院では、なるべく痛みを少なく、短期間で受診回数の少ない治療を考え、患者様に提供することを信条としております。無駄に時間と治療費を浪費するようなことは致しません。よく相談して治療方針を決めていきましょう。
足の裏に生じた大きなウイルス性いぼは、液体窒素をしても水疱にならず治療困難なことがあります。足の裏に生じた大きなウイルス性いぼは、外から見えている部位はごく一部に過ぎず、大部分は根をはるように皮膚の奥へ奥へと増殖している為、大きないぼは水疱が出来づらいです。どんなに強く液体窒素を当てても、水疱は出来ません。では、当院ではどのように治療しているかというと、モノクロロ酢酸を用います。前記で書いた通り、モノクロロ酢酸で壊死したいぼをカミソリで削ぎ落し、徐々に小さくしていくので、いぼが大きくとも治療毎に確実に小さくしていくことが出来ます。小さくなったいぼに対して、最後の仕上げとして液体窒素を行うこともしております。液体窒素とモノクロロ酢酸には得手不得手があり、それを理解して、患者様にとって何が一番良いのかを熟慮し、よく相談して治療方針を決めていきます。